Madone SLR 7 Gen 6 オーバーホール

すっかり寒くなってきましたが、ここ最近沢山のオーバーホールのご依頼を頂戴しております。沢山のご依頼、ありがとうございます。

さて、今回はトレックを代表するバイクと言っても過言ではない、マドン SLRのオーバーホールです。Gen 6、つまりは第六世代になる訳ですが、第六世代にはOCLV700とBB90を使用した前期型と、OCLV800へグレードアップし、現在トレックのロードバイクで主流のT47BBへと変更された後期型があります。

今回は後期型の車体のため、BBなども取り外して作業を進めていきます。

また、IsoSpeedを搭載した世代でもあるので、こちらの分解も一緒に行っていきます。油圧式ディスクブレーキに電動シフトの組み合わせですと、オーバーホールのような全てを分解する作業時に、ワイヤー交換がないためスムーズですね!

早速作業を行っていきましょう!

分解

こちらは作業前の車体を撮影したものですが、車体の状態を見てください!オーナー様が大切にされていることがよくわかるキレイさですね。

外観だけですと、オーバーホールが必要なんだろうか…と思ってしまうほど素晴らしいコンディションですが、内部がどうなっているかも気になるところです。

とてもキレイな状態。内部がどうなっているかを中心に見ていきます。
とてもキレイな状態。内部がどうなっているかを中心に見ていきます。

この個体にはオプションのDHバーが装着されていました。もちろんバラしますので、マスキングテープで元の位置に戻せるよう、マーキングしておきます。

特にDHバー周辺は汗で劣化が生じやすい場所でもありますので、分解後の防錆処理も含めて作業を行っていきます。

オプションのDHバー。分解後にバー下の劣化が見られる場合もあります。

チェーンは0.5がもう入りそうな伸び具合。オーナー様とご相談の上、交換となりましたので取り外します。

チェーンを取り外したら、リアディレイラーも取り外します。Di2は電気ケーブルなので、専用工具で引っ張って抜きます。

ホイールを取り外す前に、チェーンステーガードをディスクローター周辺に巻きます。

実はこの世代のマドン、後輪ホイールを取り外す際にディスクローターがチェーンステーに当たる場合があります。そのため、必ずガードを巻いてから取り外しを行います。

チェーンステー側はスプロケットが干渉せず、チェーンも取り外してしまったため傷がつく心配がないので装着していません。

ホイールを外したら、ディスクローターやスプロケット、フレームからはドライブトレイン周辺やチェーンキーパーなどを取り外し、洗浄準備は完了!

Di2の場合ケミカルに浸すことはできないので、フレームの洗車時に車体へ取り付けてケーブルを繋ぎ、洗車メニューと同様の方法で洗浄します。

取り外したパーツ類。これから洗浄します。
取り外したパーツ類。これから洗浄します。

ホイールを前後共外したらブレーキパッドも外しますが、パッド裏面にはR、Lの表示があり、右側と左側で取り付けるパッドが決まっていますので、装着時は要注意な部分。

パッドを外したら、黄色のブリード用のブロックを挿してレバー握りによるピストンの脱落を防げます。脱落するとオイルが漏れ出してしまうため、この対策は毎回行っております。

パッドの向きは装着時に必ず確認しています。ブリードブロックを挿しておけばさらに安心です。
パッドの向きは装着時に必ず確認しています。ブリードブロックを挿しておけばさらに安心です。

ボトムブラケットの脱着

フレーム装着パーツの取り外しと分解を行っていきますが、このマドンにはIsoSpeedもあるためシートポスト周りの分解が必要になります。

フォークを固定して、BB周りをスタンドに乗せるタイプへメンテナンススタンドを入れ替えて、作業を進めていきます。

BBの取り外しから。後期型はBBがT47でネジ式のため、取り外しも容易なのは嬉しいポイント。固着で外すのが難しい場合もあるので、ロングのハンドルを使用して回すと、あっさり取り外しができました!

ネジ山も塗布されていた古いグリスを取り除き、ねじ切りもボトムブラケットを取り付けした時に砂の噛む音がしないよう、ブラシを使用して砂などの細かい汚れを全て除去します。

今回はボトムブラケットは組み戻しではなく、アップグレードです!BB90の時代からアップグレードとして定番の、Suginoのスーパーセラミックをご依頼いただきました!

こちらの製品のいいところは、メンテナンスフリーである事、セラミックなのに耐久性が高く、値段がそこまで高くないことが挙げられます。

カスイチのような平坦かつノンストップな環境をメインで走る場合、駆動系のセラミック化で得られる恩恵はなかなかのもので、一定速度の巡航を保ち続けるトライアスロン系のバイクに装着されることの多いパーツです。

ボトムブラケットのセラミック化では定番のSugino スーパーセラミック。 税込¥31,900
ボトムブラケットのセラミック化では定番のSugino スーパーセラミック。 税込¥31,900

IsoSpeed分解、クリーニングとグリスアップ、組み戻し

IsoSpeedの分解に入る前に、シートポストを取り外します。サドル高がわからなくならないよう、マスキングテープのマーキングと、万が一剥がれてしまった時の保険でメジャー計測を行い、数値上のサドルハイトも残しておきます。

マスキングテープでのマーキングは簡単で確実な方法。サドル高を計測済みなので、剥がれても大丈夫!
マスキングテープでのマーキングは簡単で確実な方法。サドル高を計測済みなので、剥がれても大丈夫!

それでは、いよいよIsoSpeedの分解に移っていきます。カバーは工具を使用せず、両手で外側に広げると外すことができます。このカバーは樹脂製で、取り外し時に破損したことは1度もないのですが、外す時はゆっくりと慎重な作業を行う部分です…。

可動部のネジは左右異形サイズなので、両サイドに工具をかけて回し、砂や水などの侵入を防ぐためのゴムカバーを外します。

今回もというべきでしょうが、左側のグリスが完全に抜けているのか全く動かずに取り外しができませんでしたので、いつも通りラスペネの出番です!

この車体ではIsoSpeedの異音もなく、幸い直ぐに取り出すことができたため楽に済みましたが、錆が回っていたりすると抜けない場合もありますので定期的な分解整備が欠かせない場所となっています。

異音、固着となると大変なので、IsoSpeedの定期整備は欠かせません。
異音、固着となると大変なので、IsoSpeedの定期整備は欠かせません。

可動部分の部品が無事外せたところで、トップチューブ側で固定してるボルトを取り外し、可動部分をゆっくり引き抜いて外します。

スライダー部分はこちらで固定。トルク指定もきちんと記載。
スライダー部分はこちらで固定。トルク指定もきちんと記載。

稼働部分を外したところを見る機会はあまりないかと思いますが、こんなに細長い形をしています。この形状ででシートポストを挿して、人の体重を支えられているのも不思議な感じがしますね。

長年お乗りいただいているとフレームとの隙間に汚れがかなり溜まることもありますが、こちらもキレイな状態。

調整式は可動部分が取り外し可能。
調整式は可動部分が取り外し可能。

可動部が収まっている部分もの造形もかなりのもので、トップチューブは窪み加工がしてあり、シートポストが納まっている側に空いている穴も、これで強度が担保できて速いのだからよく作ったなという印象です。

こちらも多少の汚れが付着している程度で、キレイな状態を保っていますね!

IsoSpeedが調節式の世代は分解のし甲斐があります!
IsoSpeedが調節式の世代は分解のし甲斐があります!

これらIsoSpeed周辺は部品は点数も少なめなので、クリーニングにグリスアップをして組み戻しを行います。

パーツの消耗が見られることはほとんどない場所ですが、クリーニング時にしっかり確認します。

IsoSpeed周辺パーツ。部品点数は少なめ。
IsoSpeed周辺パーツ。部品点数は少なめ。

分解を終えたところで、各パーツをキレイにクリーニングしていきます!

まずはIsoSpeedの受け側に残っている古いグリスを除去し、パーツ側に残っているグリスや汚れもキレイに落としていきます。

調整機構が収まるフレーム側もクリーニング。黒い汚れが付着していましたが、こちらもキレイに仕上げます。

パーツクリーニングとパーツの状態チェックを終えたら、いよいよ組み立てに入ります。

こちらは可動式IsoSpeedの固定パーツに当たり、後ろ側からネジを閉めることによってパーツを固定する仕組みです。

IsoSpeedの調整を行う時には真ん中の黒いダンパープリロード用ネジを緩めて、トップチューブ側のピンチボルトも緩めることで調整スライダーを動かすことができます。

シートチューブのリアホイール側に到着するパーツで、まずはフレームへ仮止めを行います。その後、トルクレンチにて適正トルクで締め付け。

固定ができたらIsoSpeedの可動部分をフレームへ戻し、ボルトと受け側にグリスを塗布。トルクレンチを使用して適正トルクにて締め込みを行います。

ゴムカバーは攻撃性のないケミカルを使用してクリーニング後、フレームへ取り付け。

最後にIsoSpeedのカバーを慎重に広げて装着したら、IsoSpeed周りのオーバーホールは終了です!

IsoSpeedの整備が終わったらシートポストをクリーニングして挿し込み、こちらもフレームに記載のある適正トルクにて、トルクレンチを使用して締め付けます。

ブレーキオイル交換、ブレーキパッドクリーニング

お次はブレーキオイル交換です!R8000系アルテグラDi2のレバーは、ブラケットフードを後ろからめくると見えます。

こちらはブリーディング用の工具を装着する口で、キャップを取り外した状態です。

ピストンもクリーニングしていきます。これはシマノ公式で発表されているピストンクリーニングで、片側ずつピストンを出してクリーニングをしていく方法です。

使用期間が長いとどうしてもピストンへ汚れの付着が起きてしまい、ピストンの動作が遅くなったり、動作不良を引き起こす原因となります。

ピストンクリーニングは確実な動作のためにも、定期的に必要です。
ピストンクリーニングは確実な動作のためにも、定期的に必要です。

ブレーキパッドのクリーニングは、定番のMuc-Offディスクブレーキクリーナーで!スプレータイプなのでパッドに直接噴射し、拭き取るとあらビックリ!!

汚れが特に蓄積する部品でもあり、パッドが油分を吸い込んでしまうと音鳴りや制動力の大幅な低下といった症状が現れてしまいます。

フレーム洗浄

お次はフレームの洗浄を行っていきます!こちらは洗浄前の状態ですが、とてもキレイですね…洗浄の必要はなさそうに見えます(笑)

Di2はケミカルに浸すことはできないので、フロント、リアのディレイラーを装着。フレーム洗浄時に同時に洗ってしまいます。

とってもキレイな状態のフレーム。オーナー様が大切にされていることが伺えます。
とってもキレイな状態のフレーム。オーナー様が大切にされていることが伺えます。

それでも普段手が届きにくい部分や、光を反射させないとわからないレベルでの汚れをようやく見つけられました。仕事がなくなるところでした(笑)

こういった普段手が届きにくい部分に関しては、分解整備時にしっかりと洗浄して汚れを落とし、防汚処理までやります!

キレイにできそうな部分も見つかったところで早速洗車を開始してみると、水弾きがいいですね…。これはコーティング施工がされている車体のようです。

表面で水が大きな粒となっています。コーティングがかかっている証ですね。
表面で水が大きな粒となっています。コーティングがかかっている証ですね。

水だけでは思ったより汚れが取れないため、簡易コーティングや防汚効果のあるケミカルが塗布されているようですね。

バイクウォッシュを全体に塗布し、Muc-OffのDEEP SCRUBBER GLOVESを使用して、撫でるように洗浄。

高強度・高耐久性のシリコンで作られ、230℃まで耐えられるのでお湯での洗浄もOK!ブラシよりも使いやすく、重宝しています。

簡易コーティングや防汚効果のあるケミカルは落ちやすいのですが、最後の仕上げで同じ効果のある防汚、艶出し剤塗布も行っています!

ホイールハブクリーニング、グリスアップ

洗車が終わったら、ホイールハブのクリーニングとグリスアップに移ります。

まずはフリーボディを引っ張って取り外してみましょう。外してみると…経過年数よりは状態良好です!

汚れてはいますがクリーニングで簡単に落とせる汚れのものですし、パーツ自体は問題なさそうですね。

フリーボディの汚れは、沢山お乗りになられている証拠です!
フリーボディの汚れは、沢山お乗りになられている証拠です!

ハブ側は劣化したグリスと汚れが混ざり合っている状態ですが、これも健全な汚れ方と言っていいでしょう。

各パーツに錆やベアリングのゴリゴリとした感触もなく、クリーニングのみで十分性能が復活しそうです。

汚れを落として最終確認するものの、受け側も状態良好。
汚れを落として最終確認するものの、受け側も状態良好。

フリーボディは爪やスプリング、それらを固定するロックリングなどを取り外した上でクリーニングを行い、パーツをキレイな状態へ戻します。

クリーニングが終わったら各パーツの状態を点検し、問題なければパーツをフリーボディへ組み戻します。

フリーボディ各パーツは問題なく、そのまま組み戻しました。
フリーボディ各パーツは問題なく、そのまま組み戻しました。

パーツを戻したらグリスアップです。3つの爪があるフリーボディの場合、スプリングで爪を持ち上げて引っかけるような構造になっているので、粘性が高いグリスを使用すると動作不良を起こす場合があります。

当店では粘性の高くない、コチラのセラミックグリスを塗布しています。セラミックタイプで抵抗減少の効果も同時に得ることができるため、こういった部位にはうってつけだったりします。

フィニッシュラインのセラミックグリス。低粘度で回転もスムーズになるため、フリーボディにはうってつけ。
フィニッシュラインのセラミックグリス。低粘度で回転もスムーズになるため、フリーボディにはうってつけ。

セラミックグリスをたっぷり塗布してフリーボディを元に戻したら、組み直し後の固定は問題ないか、スムーズに回転するか、爪がきちんと引っかかり動作不良がないかを確認します。

グリスは定期的な補充が必要です。グリス切れになる前の作業が理想的!
グリスは定期的な補充が必要です。グリス切れになる前の作業が理想的!

フリーボディの反対側とフロントホイールはシールドベアリングなのでメンテナンスは必要ないものです。

ですが、当店では腐食や錆といった劣化、砂などの異物の侵入をできる限り防ぐ意図から、クリーニング後にグリスを塗布してキャップを閉めています。

少しの手間で長くパーツが使用できるほうがユーザーフレンドリーかなと思っております。

この後、振れ取りやスポークテンション確認、センター確認も行っております。

ローターを新品に交換、スプロケットも装着してホイールの作業は終了となります!

ヘッドクリーニング、グリスアップ

オイルホース内装式のため、フォークを完全に抜くにはホースカットが必要となります。

そのため、引き抜き可能な分だけフォークを下げ、隙間からベアリングやフレームの受け側をクリーニング。そのあとグリスを塗って元に戻す作業を行います。

第六世代マドンのスペーサーは左右分割タイプなので、ステムを取り外すことなくすきまをつくることができます。ここは整備性をしっかり考慮されて設計されていることが伺えますね。

上下のベアリングの状態を確認すると、上側は錆の心配をしていましたが全く問題なし。下も汚れこそ蓄積しているものの、クリーニングで十分キレイになります。回転も良好で問題なしのため、そのまま使用します。

ここでベアリング交換となると、オイルホースを全てカットして取り外す必要があるので、なるべく長持ちするようにグリスでの保護は必須でしょう。

まさかのクリーニング後、グリスアップ後の写真撮影をしておりませんてした…ご容赦ください。しっかり作業はしました!!

ヘッド周りの作業が終わったら、最後にプレッシャーアンカーを締め直します。

ここは緩むことも多く、しっかり固定されていないとヘッド周りにガタが出てしまうだけでなく、車輪が真っすぐでもハンドルが回転してしまうことがありますので、適正トルクで毎回必ず締め付けを確認します。


プレッシャーアンカーは要注意ポイント。
プレッシャーアンカーは要注意ポイント。

DHバーのボルトに錆が見受けられたので、Muc-OffのHCB-1にてボルトへコーティング。錆から強力に保護してくれます。

24時間の乾燥時間が必要なので、オーバーホールのような時間のかかる作業時には、塗布後の乾燥時間をしっかり取っています。

効果の持続期間は12か月だとかで…長時間錆からの保護が期待できますね!

HCB-1  ¥3,410
HCB-1 ¥3,410

ヘッド周りの作業が終わったら、トルクレンチを使用してクランクの取り付け、ホイール装着後にブレーキキャリパーの位置調整やディスクローターの振れ取り作業を。

ローターを交換するとブレーキのクリアランスが異なるのでセッティングのやり直しが必要となり、新品でも振れが出ている場合がありますので、よく観察してセッティングを行います。

ブラケットフードの交換も承りましたので、こちらも交換させていただきました!

作業終了

調整と実走確認、艶出しと防汚剤の塗布を行って完成です!

今回もキレイに仕上げることができました!チームカラーに恥じない輝きを取り戻せたのではないでしょうか。

オーナー様のご希望でバーテープはご自身で巻かれるとのことで、バーテープレスにてお渡しです。

中も外も新品に近い状態に回復、お渡しの時にオーナー様が満足そうに車体を受け取っていただける事は、施工者冥利に尽きます。

この度はご依頼ありがとうございました!

最後までお付き合いいただきありがとうございました。オーバーホールにご興味のある方は、下記のリンクを見ていただけるとご参考になると思います。

オーバーホールの詳細はコチラ!

オーバーホール~スポーツバイクの車検~

オーバーホールはロードバイクやクロスバイク、マウンテンバイクといったスポーツバイクの車体を分解し、普段状態の確認を行えない内部まで洗浄、安全にお乗りいただける…

これまでの施工バイクはコチラからどうぞ!

テックブログ - 梶原自転車店

今回はMERIDA REACTO4000のオーバーホールを行いました!

コメントを残す